人に何かを教えることが上手い人と、そうでない人の差って、実はとても分かりにくいところにあると思いませんか。
自分の教え方が上手いかどうか、なかなか自分では気付けないものです。
でも、周りはちゃんと見ています。
「あの人に聞くと、すんなり分かる」「説明を聞いてもモヤモヤが残る」、こういった評判は、1度ついてしまうと、じわじわと積み重なっていくものです。
仕事の場でも、家庭でも、友人関係でも、教え方の上手い人は自然と頼られる存在になっていきます。
仕事で後輩に何かを伝えるとき、家族や友人に操作方法を説明するとき、講義の場で受講者と向き合うとき。
日常のあちこちで、私たちは必ず「教える」という場面に出合います。
そしてその瞬間に、あなたへの印象がガラリと変わることがある。
教え方ひとつで「できる人」と見られることもあれば、「なんとなく話が通じない人」というレッテルを貼られることもあるんです。
実は私自身、教え方に悩んだ時期がありました。
丁寧に説明しているつもりなのに、相手の顔がだんだん曇っていく。
「分かりました」と言ってもらえても、どこか目が泳いでいる。
そんな場面が何度もあって、何がいけないんだろうと頭を抱えたこともありました。
IT技術を人に教える立場になってから最初の頃は、自分の知識を全部伝えようとしてしまい、かえって相手を混乱させてしまうことが多かったです。
その失敗から気づいたのが、「伝える順番」の大切さでした。
まず結論から話す。
理由を添えて、具体的な事例を出してから、最後に結論をもう1度繰り返す。
これがいわゆるPREP法と呼ばれる話の組み立て方ですが、順番を守るだけでは足りませんでした。
相手が何を知りたいのか、どこでつまずきやすいのか、そこを読み取る力が同時に必要だったんです。
構成を整えることは大事ですが、それよりも先に「相手がどこにいるのか」を確認することの方が、ずっと重要だと気づきました。
教えることが得意な人を観察していると、ある共通点に気づきます。
相手のペースに合わせることが自然にできている。
早口でもなく、遅すぎでもなく、まるで会話をしているような感覚で情報が届いてくる。
「あ、そういうことか」という声が思わず出てしまうような、そんな説明をしているんです。
相手の反応を見ながら、リアルタイムで言葉を選んでいるような柔軟さがあります。
とはいえ、教えることがうまくいかないとき、たいていは「自分の理解」をそのまま話してしまっています。
自分にとって分かりやすい順番で、自分が覚えた方法で、相手に伝えようとする。
でも受け取る側からすると、それは情報の洪水になってしまうことがある。
正確な内容でも、相手に届かなければ意味はないんです。
プログラミングの現場でも、同じことが何度も起きました。
エラーメッセージの意味を説明するとき、丁寧にコードの仕組みから話し始めると、受講者の目が遠くなることがありました。
でも先に「このエラーは、ここを直せば消えます」と結論を言ってから理由を話すと、ぐっと前のめりになってくれる。
その違いを、私は現場で何度も体感してきました。
結論を先に置くだけで、相手の「聞く準備」がまるで変わるんです。
教えることは、相手への贈り物のようなものだと私は思っています。
相手にとって受け取りやすい形に包んで渡す。
そのラッピングが「話の構成」であり、「言葉の選び方」であり、「間の取り方」でもあります。
それを意識するようになってから、受講者との関係がずいぶん変わりました。
分かった瞬間に顔がほぐれる受講者が増えて、質問の内容も変わってきた。
「なぜそうなるの?」という深い問いが自然と生まれるようになってきたんです。
もしあなたが今、後輩への指導に悩んでいたり、家族への説明がうまく伝わらないと感じているなら、1度だけ試してほしいことがあります。
説明を始める前に、「最も伝えたいことは何か」を自分の中で決めてから話し始めてみてください。
最初の文に結論を置く。
それだけで、相手の聞く姿勢がガラッと変わることがあります。
難しいテクニックは何もいりません。
ただ、順番を少し変えるだけでいいんです。
教えることが上手くなると、職場での信頼も変わっていきます。
家族との会話も、友人からの相談も、少しずつ変化していく。
「あなたに聞くと分かりやすい」という言葉は、どんな資格よりも価値のある評価だと私は感じています。
すぐに手に入るものではないけれど、少しずつ積み重ねていけば、確実に手が届く場所にある。
教えることが上手い人は、特別な才能があるわけではありません。
ただ、相手のことを考える習慣がある。
それだけのことなのかもしれません。
あなたの周りにも、「この人の説明はなぜか入ってくる」という人はいませんか。
その人が何をしているのか、少しだけ観察してみると、新しい発見があるはずです。