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講義の質を左右するのは、受講者理解という名の「準備」だった

プログラミング講師として多くの受講者と向き合ってきた中で、ある日ふと気づいたことがあります。

それは、講義の良し悪しを決めるのは話す内容そのものではなく、その前段階にあるということでした。

どれだけ洗練されたカリキュラムを用意しても、目の前にいる人たちの状況を把握していなければ、その内容は空回りしてしまうんです。


講義を担当するとき、私が最も時間をかけているのは実は講義そのものではありません。

受講者一人一人がどんな知識を持っていて、何を学びたいと思っているのか、その理解度や意識を事前に丁寧に見極めることに力を注いでいます。

この作業を怠ると、せっかくの学びの場が機能しなくなってしまうからです。


以前、ある企業向けの研修で失敗した経験があります。

その日は20名ほどの受講者がいたのですが、事前のヒアリングが不十分で、参加者のスキルレベルにかなりのばらつきがあることに気づいていませんでした。

講義が始まってすぐ、ある方の表情が曇っているのが見えました。

逆に別の方は退屈そうにしている。

つまり、説明が難しすぎる人と簡単すぎる人が同じ空間にいたんです。

その日の研修は正直なところ、誰にとっても中途半端なものになってしまいました。


この失敗から学んだのは、受講者の現在地を知ることの重要性でした。

それ以降、講義前には必ず簡単なアンケートや面談を通じて、それぞれの方がどの程度の知識を持っているか、どんな目標を持って参加しているかを確認するようにしています。

例えば、パソコン操作に不慣れな方がいれば基礎から丁寧に説明しますし、すでに実務経験がある方には応用的な内容を織り交ぜます。


受講者の理解度を把握するというのは、単にテストを実施するということではありません。

むしろ、対話を通じて見えてくるものの方が大きいんです。

「普段どんな業務をされていますか」
「これまでどんなツールを使ってきましたか」
「今日の講義で何を持ち帰りたいですか」

といった質問を投げかけることで、その人の現状や期待が少しずつ見えてきます。

ときには雑談のような会話の中に、重要なヒントが隠れていることもあります。


また、学びたいという気持ちの温度差も見逃せません。

自ら希望して参加している方と、会社の指示で仕方なく来ている方では、モチベーションがまったく違います。

前者には深い内容を提供できますが、後者にはまず興味を持ってもらうための工夫が必要です。

具体的には、実務に直結する事例を多く紹介したり、すぐに使える小技を伝えたりすることで、「これなら役に立ちそうだ」と思ってもらえるよう心がけています。


事前準備として私が実践しているのは、受講者リストを見ながら一人一人の背景を想像することです。

年齢、所属部署、職種などから、その方がどんな課題を抱えているかをある程度推測できます。

もちろん推測だけでは不十分なので、必ず本人に確認しますが、この準備があるだけで質問の精度が上がりますし、相手も「この講師は自分のことを理解しようとしてくれている」と感じてくれるようです。


ある日の研修では、事前ヒアリングで一人の受講者が「自分だけ周りについていけないかもしれない」と不安を口にしていました。

その方は他の参加者よりもIT経験が少なく、専門用語を聞くだけで緊張してしまうとのことでした。

そこで私は講義の冒頭で、

「難しい言葉が出てきたらいつでも遠慮なく聞いてください。この場は学ぶ場所ですから、わからないことは恥ずかしいことじゃありません」

と全体に伝えました。

すると、その方だけでなく他の受講者からも質問が増え、結果的に全員の理解が深まったんです。


受講者の意識を把握することは、講義の構成にも影響します。

例えば、全員が初心者であればゆっくりと基礎から積み上げていきますが、中級者が多ければ基礎は簡単に触れる程度にして、実践的な演習に時間を割きます。

また、特定の分野に強い興味を持つ人が多ければ、その部分を掘り下げることもあります。

つまり、同じテーマの講義でも、受講者によって内容は柔軟に変わるべきなんです。


もう一つ大切にしているのは、講義中の観察です。

事前準備だけでは見えなかったことが、実際に進めていく中で明らかになることがあります。

誰かが首をかしげていたり、メモを取る手が止まっていたりしたら、そこで一度立ち止まって確認します。

「今の説明、わかりにくかったですか」

と尋ねると、多くの場合「実はちょっと」という反応が返ってきます。

そのタイミングで言い換えたり、別の例を出したりすることで、理解の溝を埋めることができます。


反対に、全員がスムーズに理解している様子なら、予定していた内容を少し前倒しして、より発展的なトピックに進むこともあります。

このように、事前の準備と当日の柔軟な対応を組み合わせることで、受講者にとって最適な学びの時間を提供できると考えています。


さらに、講義後のフォローアップも忘れてはいけません。

終了後にアンケートを取るだけでなく、可能であれば個別に声をかけて感想や疑問点を聞きます。

「今日の内容で一番印象に残ったのはどこですか」
「実務で使えそうだと思いましたか」

といった質問を通じて、講義の効果を確認しつつ、次回以降の改善点も見つけることができます。


ある受講者からは後日、

「あの日の講義で教えてもらったことを早速職場で試してみたら、作業時間が半分になりました」

というメッセージをいただきました。

その方は事前ヒアリングで「日常業務の効率化が知りたい」と話していたので、そのニーズに合わせた内容を盛り込んでいました。

こうした反応をいただけると、事前準備の大切さを改めて実感します。


結局のところ、講師としての役割は知識を一方的に伝えることではありません。

受講者がどこから来て、どこへ向かおうとしているのかを理解し、その旅路に寄り添うことだと思っています。

一人一人の理解度や意識を丁寧に見ることで、初めて本当の意味での学びの場が生まれるんです。


これからも、目の前にいる人たちの声に耳を傾け、それぞれに合った形で知識や技術を届けていきたい。

そのためには、講義そのものよりも、その前後の準備と観察に時間をかけることを惜しみません。

受講者が笑顔で「わかった」 「できた」と言ってくれる瞬間こそが、講師としての何よりの喜びですから。


あなたが何かを教える立場にあるとき、相手の理解度や意識をどれだけ把握していますか。

もしかしたら、そこに改善のヒントがあるかもしれません。


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