手を動かさないと人は変わらない。
これは講師として現場で何年も受講者と向き合ってきた中で、私が最も強く感じていることです。
どんなに理論を美しく説明しても、どれだけ分かりやすいスライドを用意しても、実際に自分で試してみなければ本当の理解には到達しません。
今日はそんな「手を動かす学び」の重要性と、講師として実践しているフィードバックの話をしたいと思います。
相模原で講義をしていると、ITに不慣れな方々と出会う機会が本当に多いんです。
50代や60代の経営者の方が「パソコンは苦手で」と恐る恐る教室に来られることもあります。
そんなとき、私はまず小さな成功体験を一緒に作ることから始めるんですよね。
例えば表計算ソフトで簡単な計算式を入れてもらう。
たったそれだけのことでも、自分の手で入力して結果が表示された瞬間、受講者の表情がパッと明るくなるんです。
その瞬間を見るたびに、理屈よりも体験の方がはるかに強力だと実感します。
ある日の講義で印象的だった出来事があります。
地元で製造業を営む社長さんが受講されていて、最初は「うちには関係ない」という雰囲気だったんです。
でも実際にスマートフォンのアプリを使って在庫管理のデモをやってもらったら、目の色が変わりました。
「これ、明日からうちでも使えるじゃないか」って。
理論の説明だけでは絶対にその反応は引き出せなかったでしょう。
手を動かすことで初めて、自分の仕事とITがどう結びつくのかが見えてくるんです。
教える立場になって気づいたのは、失敗こそが最高の教材だということです。
受講者が手を動かすと、必ず予想外のエラーや思い通りにいかない場面が出てきます。
でもそれがチャンスなんですよね。
なぜうまくいかなかったのか一緒に考えて、原因を探っていくプロセスこそが深い学びにつながります。
私自身もエンジニア時代に挫折を経験して、うつ状態になったことがあります。
あのとき誰かが一緒に原因を探ってくれていたら、もっと早く立ち直れたかもしれません。
だからこそ今、受講者が困っているときは絶対に見逃さないようにしています。
フィードバックのタイミングも本当に大切です。
受講者が課題をクリアした直後に
「ここが良かったですね」
「この考え方は素晴らしい」
と具体的に伝える。
すると次の課題への意欲が全然違ってくるんです。
逆にうまくいかなかったときは、すぐに「大丈夫ですよ、一緒に見ていきましょう」と声をかけます。
否定するのではなく、どこでつまずいたのかを一緒に確認するんです。
この繰り返しが、受講者の自信を少しずつ育てていきます。
講義の中で意識しているのは、レベルを少しずつ上げていくことです。
最初は誰でもできる簡単な操作から始めて、成功したら次は少しだけ難しい課題を出します。
この「少しだけ」というのがミソで、大きすぎるステップアップは挫折につながるし、小さすぎると退屈になってしまいます。
受講者一人ひとりの理解度を見ながら、その人に合ったペースで進めることが求められるんですよね。
画一的な進め方では誰も幸せになりません。
例えば、ある受講者はエクセルの関数を使いこなせるようになったら、次は複数のシートを連携させる方法を教えます。
別の受講者はまだ基本的な入力に慣れていないなら、焦らずキーボード操作の練習を繰り返します。
画一的なカリキュラムではなく、その人の状況に応じて柔軟に対応するのが講師の役割だと思っています。
マニュアル通りに進めるのではなく、目の前の受講者が今何に困っているかを見極めることが大事なんです。
相模原でこの仕事を続けていると、地域の中小企業がどれだけIT化に苦労しているかが見えてきます。
「何から始めればいいか分からない」という声を本当によく聞くんです。
だからこそ、実際に手を動かして小さな成功を積み重ねていく支援が必要なんですよね。
理論だけでは現場は動きません。
目の前で実際にやってみて、うまくいく体験をすることで初めて「これならできるかも」という気持ちが生まれるんです。
受講者の中には、最初は「自分には無理」と言っていた方もいます。
でも手を動かして、フィードバックを受けて、少しずつできることが増えていくと、自信がついてくるんです。
ある受講者は3ヶ月前まで「パソコンを開くのも怖い」と言っていたのに、今では自分で簡単なデータベースを作れるようになりました。
その変化を目の当たりにすると、講師としてのやりがいを強く感じます。
人が変わる瞬間を間近で見られるのは、この仕事の特権だと思っています。
フィードバックで大事にしているのは、具体性です。
「良かったです」ではなく、「この部分の考え方が論理的で素晴らしいです」と伝える。
「ここが間違っています」ではなく、「この箇所をこう変えると、もっとスムーズに動きますよ」と提案する。
抽象的な言葉では相手の心に響かないし、次の行動につながりません。
何がどう良かったのか、何をどう直せばいいのかを明確に伝えることで、受講者は次に何をすればいいかが分かるんです。
また、失敗したときこそ丁寧に向き合うことを心がけています。
エラーメッセージが出たとき、受講者は焦ります。
でもそこで
「エラーは悪いことじゃないんです。むしろコンピュータが教えてくれているんですよ」
と伝えると、受講者の表情が少し和らぎます。
そして一緒にエラーの内容を読み解いて、解決策を探していく。
このプロセスを何度も繰り返すことで、受講者は自分で問題解決できる力を身につけていくんです。
最初は講師に頼りきりだった方が、だんだん自分で調べて解決できるようになっていく様子を見るのは本当に嬉しいものです。
私自身、かつてはエンジニアとして働いていました。
でも挫折を経験して、一時期はうつ状態にもなりました。
あの頃は誰にも相談できず、一人で抱え込んでいたんです。
だからこそ今、講師として受講者と向き合うときは、絶対に一人で悩ませないように気をつけています。
困ったらすぐに声をかけてほしいし、一緒に解決策を探したい。
そんな思いで毎日講義に臨んでいます。
自分が苦しんだ経験があるからこそ、受講者の不安や戸惑いに敏感でいられるのかもしれません。
成功体験を積み重ねることの大切さは、自分の経験からも痛感しています。
小さな「できた!」が次の挑戦への勇気になるんです。
講義の最後に「今日はこれができるようになりましたね」と振り返りの時間を作るのも、そのためです。
自分がどれだけ成長したかを実感してもらいたいんですよね。
前回できなかったことが今日できるようになった、その事実を言葉にして確認することで、受講者の中に確かな自信が育っていきます。
手を動かす学びとフィードバックの繰り返しは、時間がかかります。
効率的な方法とは言えないかもしれません。
でも、この方法で学んだことは確実に身につきます。
表面的な知識ではなく、自分の血肉になった理解として残るんです。
それが本当の意味での学びだと、私は信じています。
講義が終わった後も受講者の中に残り続ける学びこそが、本物なんです。
相模原という地域で、地元の企業や人々と一緒に成長していける環境に感謝しています。
都会の大きなスクールではできない、一人ひとりに寄り添った支援ができる。
それがこの土地で講師をすることの魅力です。
これからも、手を動かす学びの場を提供し続けていきたいと思っています。
地域に根ざした教育支援を通じて、相模原がもっと元気になる手助けができたら嬉しいです。
あなたも何か新しいことを学ぶとき、まずは小さく手を動かしてみませんか。
失敗を恐れず、一歩ずつ進んでいく。
そのプロセスの中にこそ、本当の成長があるはずです。
完璧を目指さなくていいから、まずは試してみる。
その一歩が、あなたの未来を変える第一歩になるかもしれません。
