プログラミングを教える仕事をしていると、つくづく感じることがあります。
それは、どんなに素晴らしい技術や知識を持っていても、相手が聞く耳を持たなければ何も伝わらないということです。
相手の注意を引くことから教えは始まります。
これは教育の現場だけでなく、ビジネスでも人間関係でも同じではないでしょうか。
実際に講義を担当していた頃の話をしましょう。
ある企業研修で、IT導入に消極的だった受講者の方々がいました。
参加者は20名ほどで、年齢層も30代から60代まで幅広い構成でした。
最初は「うちの会社にはITなんて必要ない」という空気が漂っていました。
会議室の後ろの方に座った方々は腕を組んで明らかに不機嫌そうでした。
そんな状況で技術的な話を始めても、まったく響かないのです。
そこで私は作戦を変えました。
まず彼らの日常業務での困りごとを聞くことから始めたのです。
「毎日の業務で一番時間を取られているのはどんなことですか」と質問を投げかけました。
最初は沈黙が続きましたが、一人の方が重い口を開いてくれました。
すると驚くほど変化が起こりました。
「毎月の集計作業に三日もかかって残業続きです」
「お客様からの問い合わせ対応が追いつきません」
「書類の整理だけで午前中が終わってしまいます」
といった具体的な悩みが次々と出てきました。
その瞬間、彼らの表情が変わったのです。
目が輝き始めました。
なぜなら、自分たちの問題と向き合う準備ができたからです。
話を聞きたくない状態では、どれだけ熱心になっても伝わりません。
でも、興味が湧けば内容もスッと入ってきます。
この経験から学んだのは、教える側の情熱だけでは不十分だということです。
相手が「知りたい」と思う状況を作り出すことが何より重要なのです。
プログラミング講師として多くの企業研修を担当してきた中で、この原則の大切さを痛感してきました。
受講者の方々と向き合うとき、いきなり技術的な話をするのではありません。
まず現状の課題をじっくりとヒアリングします。
たとえば、ある製造業の部長さんは「プログラミングなんて若い人がやるもの」と思い込んでいました。
50代の方で、これまで現場一筋で頑張ってこられた方でした。
しかし話を聞いていくと、毎日の報告書作成で残業が続いているという悩みを抱えていました。
手作業での集計に毎日3時間以上かかっているとのことでした。
そこで簡単な自動化ツールの事例を紹介したところ、目の色が変わりました。
「それって本当に私にもできるんですか」と前のめりになって質問してくださいました。
相手の好奇心に火をつけることが大切です。
これは決して操作的な技術ではありません。
相手のことを本当に理解し、その人にとって価値のある情報を提供することなのです。
プログラミング講師として、またストレングスコーチとして多くの方々と接してきましたが、この原則は変わりません。
人は自分に関係のあることには興味を示すものです。
だからこそ、相手の状況を深く理解することから始めなければなりません。
プログラミング講義の現場では、同じような光景を何度も見てきました。
最初は「自分にはプログラミングなんて無理」と言っていた受講者が、自分の業務に関連する具体例を示すと急に興味を持ち始めるのです。
理由は明確です。
それまで抽象的だった技術が、突然自分の現実的な問題解決につながる道具として見えてくるからです。
私自身が提供しているのは、単なる技術指導ではありません。
まず受講者の現状を丁寧にヒアリングし、その人特有の課題を見つけ出します。
そして、その課題解決に最適なプログラミングアプローチを提案するのです。
このプロセスを通じて、受講者の方々の心に「これなら自分にもできそうだ」という火が灯ります。
ここが最も重要なポイントなのです。
興味深いことに、一度火がついた受講者の学習意欲は驚くほど高まります。
「もっと詳しく知りたい」
「他にはどんな方法があるんですか」
「実際の開発期間はどのくらいかかりますか」
といった質問が次々と出てきます。
教える側としては、この瞬間が一番やりがいを感じるときです。
相手が能動的に学ぼうとする姿勢になったとき、本当の教育が始まるのです。
実際の成功事例をご紹介しましょう。
ある物流会社での研修での出来事です。
事務担当の女性の方で、毎日の配送データ整理に苦労されていました。
Excelでの手作業による集計で、毎日2時間の残業が続いていました。
最初は「私にプログラミングなんて絶対無理です」と言われていました。
しかし、配送データの自動集計というテーマに絞って具体的な改善案を提示したところ、一気に興味を持ってくださいました。
結果として、簡単な自動化スクリプトを一緒に作成し、作業時間を5分の1に短縮することができました。
さらに、計算ミスもゼロになり、残業時間も大幅に削減されました。
この成果を見た彼女は「他の業務も自動化できませんか」と積極的に質問されるようになりました。
最初は恐れていたプログラミングが、今では彼女にとって強力な味方になっています。
ただし、注意を引くだけでは不十分です。
相手の興味を持続させ、実際の行動につなげることが重要です。
そのためには、具体的で実践的な内容を提供する必要があります。
私の講義では、理論だけでなく実務に直結するプログラミング技術を教えています。
継続的なサポートやフォローアップも充実させているのは、受講者の皆さんが確実に成果を上げられるようにするためです。
教育の現場で15年以上経験を積んできて確信していることがあります。
それは、相手の心に寄り添うことの大切さです。
技術的な知識や豊富な経験も重要ですが、それ以上に相手の立場に立って物事を考える姿勢が必要なのです。
相手が何に困っているのか、何を求めているのかを理解することから、すべてが始まります。
実は、私自身も過去に大きな失敗をした経験があります。
ITエンジニア時代に、技術的な完璧さばかりを追求していて、周囲とのコミュニケーションがうまくいかなくなりました。
結果的にうつ状態になってしまい、一時期は仕事を続けることができませんでした。
その経験があるからこそ、相手の気持ちを理解することの重要性を痛感しています。
だからこそ、現在は講師として受講者一人ひとりと丁寧に向き合うことを心がけています。
相模原市を中心とした活動の中で、多くの企業の方々と接する機会があります。
そのたびに感じるのは、みなさん本当は学びたいという気持ちを持っているということです。
ただ、きっかけがないだけなのです。
ストレングスコーチとしての経験も、この考えを深めてくれました。
人にはそれぞれ異なる強みがあり、その強みを活かせる分野では驚くほど高いパフォーマンスを発揮します。
プログラミング教育においても同じことが言えます。
その人の強みや興味関心と技術を結びつけることができれば、学習効果は飛躍的に向上するのです。
最近の講義では、受講者の業界や職種に応じてカスタマイズした内容を提供しています。
小売業の方には在庫管理システム、製造業の方には生産管理システム、サービス業の方には顧客管理システムといった具合です。
同じプログラミング技術でも、その人の業務に関連する事例で説明すると、理解度が格段に向上します。
人材育成において最も大切なのは、相手の可能性を信じることだと思います。
「この人には無理だろう」と決めつけるのではなく、「どうすればこの人の興味を引き出せるだろうか」と考える姿勢が重要です。
実際、これまでの経験の中で、最初は消極的だった受講者が最終的に素晴らしい成果を上げる場面を何度も見てきました。
IT技術の普及が進む現代において、プログラミングスキルはもはや特別なものではなくなりつつあります。
しかし、それを学ぶ人の心に火をつけることができるかどうかは、教える側の姿勢にかかっています。
技術を伝える前に、まず相手の心を理解する。
これが教育の本質だと信じています。
だからこそ、まずは相手の好奇心に火をつけることが大切なのです。
これが教育の原点であり、人と人とのつながりを深める基本だと思います。
そして、その火を絶やさないよう継続的にサポートしていくことが、真の教育者の役割なのです。
相手の可能性を信じ、その人らしい学び方を見つけ出す。
そんな教育を通じて、一人でも多くの方にITの楽しさを知ってもらいたいと思っています。