DX推進を検討する企業の声を聞いていると、「社内にIT人材がいないから進められない」という相談をよく受けます。
実際に地域の経営者の方々とお話しする中で、デジタル化への想いはあるものの、具体的な第一歩が見えずに足踏みしている企業が想像以上に多いことを実感しています。
そこで今回は、社内にIT専門人材がいなくても、外部の学習機会を効果的に活用してDX推進を始める方法についてお話ししたいと思います。
相模原市内でIT研修講師として活動していると、多くの中小企業が共通して抱える課題が見えてきました。
それは人材不足よりもむしろ、「何から手をつけていいか分からない」という情報不足の問題です。
経営陣はDXの必要性を理解していても、現場の社員は
「難しそう」
「自分には無理」
と感じてしまい、なかなか前に進めないのです。
実は私自身も過去に大きな挫折を経験しました。
小学校時代からプログラミングに親しみ、ITエンジニアとして働いていた時期があったのですが、技術の進歩についていけずに心身ともに疲弊してしまった時期があります。
その後、IT企業の研修講師という仕事に出会い、技術を教える立場になって初めて、ITの本当の価値は使う人の課題解決にあることを理解しました。
以前、ある製造業の企業で研修を行った際のことです。
最初は「うちの会社にはITなんて」と言っていた50代の現場責任者の方が、3か月後には「もっと早く始めていれば良かった」と笑顔で話してくれました。
彼の変化を見ていて気づいたのは、人は適切な環境とサポートがあれば、年齢や経験に関係なく新しいスキルを身につけられるということです。
この体験が、私の講師としての原点になっています。
実際に全国で2000社以上の企業がDX学校を受講していますが、成功している企業には共通点があります。
それは社内完結型ではなく、外部の専門機関を上手く活用していることです。
つまり、すべてを自社で抱え込もうとするのではなく、学びの場を外部に求めることで、社員のモチベーションと知識の両方を効率的に向上させているのです。
外部学習の最大のメリットは、同じ課題を抱える他社の参加者との交流です。
「あの会社もこんなところから始めたんだ」という気づきが、社員の心理的ハードルを下げる効果があります。
また、講師からの専門的なアドバイスを受けながら、自社の実情に合わせたDX戦略を段階的に構築できるのも大きな利点でしょう。
私たちDX学校相模原中央校では、地域密着型の支援を心がけています。
なぜなら、地域の中小企業こそが日本経済の基盤だと考えているからです。
相模原市は製造業や小売業、サービス業など多様な業種の企業が集積しており、それぞれが独自の課題を抱えています。
だからこそ、画一的な研修ではなく、一社ごとに丁寧なヒアリングを行い、その企業の実情に合わせたカスタマイズされた支援を提供しています。
とはいえ、外部研修を選ぶ際には注意すべきポイントもあります。
理論ばかりで実践が伴わない研修では、受講後に現場で活用できません。
重要なのは、実際の業務に直結する内容を学べる環境を選ぶことです。
私たちが運営するDX学校でも、受講者の皆さんには必ず自社の課題を持参していただき、その解決に向けた具体的なアクションプランを作成してもらっています。
現場の声を聞いていると、
「デジタル化って何か特別なことをしなければいけないと思っていた」
という感想をよく耳にします。
しかし実際には、日常業務の中にある小さな非効率を見つけて、それをデジタルツールで改善していくことから始まります。
たとえば紙での管理をExcelに変える、手動での計算を自動化する、メール業務を効率化するといった身近なところからスタートできるのです。
最近印象的だったのは、ある建設会社の事例です。
現場の進捗管理を手書きの手帳から簡単なアプリに変更しただけで、情報共有の時間が大幅に短縮されました。
社長さんは「こんな小さなことでも効果があるなんて」と驚かれていましたが、これこそがDXの本質だと思います。
特別な技術を導入することではなく、既存の業務プロセスをデジタルの力で少しずつ改善していくことなのです。
さらに、外部学習を通じて得られるのは技術スキルだけではありません。
同業他社の取り組み事例を知ることで、自社の可能性を再発見できることもあります。
「うちの会社でもこんなことができるんだ」という新たな視点は、社員のやる気を大きく向上させる要素になります。
また、異業種の参加者との交流から思わぬアイデアが生まれることもしばしばあります。
補助金の活用についても触れておきたいと思います。
DX推進には国や自治体からさまざまな支援策が用意されており、適切に活用すれば研修費用の負担を軽減できます。
ただし、申請手続きが複雑で二の足を踏んでいる企業も多いのが実情です。
私たちのような外部機関では、こうした補助金申請のサポートも含めて総合的な支援を行っているケースが多く、企業の皆さんにとって心強い味方になれるはずです。
地域経済を支える中小企業の皆さんには、DXを難しく考えすぎずに、まずは外部の学習機会を活用して第一歩を踏み出していただきたいと思います。
社内に専門人材がいないことを理由に諦める必要はありません。
適切なサポート体制のもとで学習すれば、どんな企業でもデジタル化の恩恵を受けることができるのです。
私が講師として大切にしているのは、受講者の皆さんに「ITって面白い」と感じてもらうことです。
技術そのものの複雑さではなく、それを使って課題が解決される瞬間の喜びを共有したいのです。
DXは決して技術者だけのものではなく、すべての働く人たちの業務を豊かにするツールなのです。
合同会社フェデュケーションを立ち上げた理由も、多くの人にITの楽しさを知ってもらいたいという想いからでした。
天職と出会えた喜びを、一人でも多くの方と分かち合いたいと考えています。
DX推進は単なる効率化ではなく、働く人たちがより創造的で価値のある仕事に集中できる環境を作ることだと信じています。
皆さんの会社でも、外部の学習機会を活用して、DX推進の第一歩を踏み出してみませんか。
きっと想像以上の可能性が見えてくるはずです。
そして、その変化を通じて、働くことの新しい喜びを発見していただけたら、これほど嬉しいことはありません。