プログラミングという言葉を聞いて、あなたはどんなイメージを持つでしょうか。
難しそう、理系向き、数学が得意でないと無理、若い人向き…。
多くの方がこのような先入観を持っているかもしれません。
しかし、17年間のITエンジニア経験を経て、現在はプログラミング講師として活動している私から言わせていただくと、それらは単なる思い込みに過ぎないのです。
プログラミング学習において最も大きな障壁は、技術的な難しさではなく、
「自分には向いていない」
「センスがない」
という思い込みです。
講師として多くの受講者と接する中で、この思い込みによって第一歩を踏み出せない方が驚くほど多いことに気づきました。
しかし、実際に学び始めると、その壁はほとんどの場合、想像よりもはるかに低いものだったと実感されます。
私自身、小学生の頃からプログラミングに触れ、その後17年間ITエンジニアとしてキャリアを築きました。
一見すると順風満帆に見えるかもしれませんが、実は途中で大きな挫折を経験し、うつ状態に陥った時期もありました。
技術の進化についていけなくなったわけでも、能力が不足していたわけでもありません。
ただ、自分の仕事の意義や方向性に疑問を持ち、迷いや不安に押しつぶされそうになったのです。
その暗闇から私を救ってくれたのは、IT企業の研修講師という思いがけない出会いでした。
人に教えることの喜びを知り、誰かの成長をサポートすることに深い満足感を覚えました。
それまでのエンジニア経験が無駄ではなく、むしろ人に教える上での貴重な財産になることを実感したのです。
今では合同会社フェデュケーションを起業し、プログラミング講師とGallup認定ストレングスコーチとして、多くの方の学びと成長をサポートしています。
この経験から私が強く感じるのは、「悩みすぎないこと」の大切さです。
もちろん、物事を深く考えることは重要です。
しかし、考えることと悩むことは違います。
考えることは前に進むためのプロセスですが、悩むことは停滞を生みがちです。
特にプログラミング学習では、「自分に向いているかどうか」という問いに長時間費やすくらいなら、実際にコードを書いてみる方がよほど効果的です。
プログラミングは実践の学問です。
頭の中でいくら考えても、実際に手を動かさなければ上達しません。
さらに言えば、最初は中途半端な理解でも構わないのです。
完璧に理解してから次に進もうとすると、いつまでも一歩も踏み出せないことになりかねません。
最初は「なんとなくこうすればうまくいく」というレベルの理解でも、繰り返し実践するうちに、徐々に深い理解へと変わっていきます。
講座で印象的だったのは、シニア世代の受講者の方の言葉です。
「若い頃は何事も完璧にやろうとして進めなかったことが多かった。今は分からないことがあっても、とりあえずやってみて、後から理解すればいいと思えるようになった。そのおかげで、若い頃より効率よく学べている」
と語ってくれました。
この言葉には大きな知恵が含まれています。完璧主義は時に学びの最大の敵となるのです。
また、「センスの有無」に悩む方も少なくありません。
しかし、プログラミングにおいて本当に重要なのは、センスではなく継続する力です。
日々の小さな積み重ねが、やがて大きな力となります。
一日一時間でも、週に数回でも、コンスタントに取り組むことで、確実に成長していくのです。
私がGallup認定ストレングスコーチとして活動する中で実感するのは、誰もが独自の強みを持っているということです。
論理的思考が得意な方もいれば、直感的に理解する方もいます。
細部に注目する方もいれば、全体像を把握するのが得意な方もいます。
プログラミングという分野は、実はこれらの多様な強みがそれぞれ活きる場面が数多くあります。
つまり、「プログラミングに向いている人」という一つの型は存在せず、様々な特性や強みを持つ人がそれぞれの方法で活躍できる領域なのです。
現代社会において、プログラミングスキルはますます重要になっています。
しかし、それは「全員がプロのプログラマーになるべき」という意味ではありません。
日常生活やビジネスにおいて、プログラミング的思考を持ち、基本的な概念を理解しているだけでも、大きなアドバンテージとなります。
たとえば、Excelでの作業を自動化したり、データ分析の基礎を理解したり、AIツールを効果的に活用したりするためには、プログラミングの知識が役立ちます。
プログラミング学習において重要なのは、小さな成功体験を積み重ねることです。
最初から複雑なシステムを作ろうとするのではなく、シンプルなプログラムから始めて、確実に動くものを作る。
その喜びを味わいながら、少しずつ複雑な課題に挑戦していく。
この積み重ねが、自信と実力を同時に育てていくのです。
私の講座では、「失敗を恐れない」ことも強調しています。
プログラミングではエラーは日常茶飯事です。
プロのプログラマーでも、毎日のようにエラーと格闘しています。
重要なのは、エラーが出ないことではなく、エラーから学び、解決する力を養うことです。
エラーメッセージは、コンピュータからの大切なフィードバックであり、成長のための貴重な教材と考えることができるのです。
また、周囲の環境も学習の成否に大きく影響します。
一人で黙々と学ぶよりも、仲間がいたり、質問できる相手がいたりすると、モチベーションも維持しやすくなります。
オンラインコミュニティやプログラミング教室など、自分に合った形で学習仲間を見つけることも、長く続けるコツの一つです。
プログラミング学習で中途半端な理解に悩む方も多いでしょう。
「なんとなく動いているけど、完全には理解できていない」という状態は、誰もが通る道です。
しかし、それを恥じる必要はありません。
むしろ、その不完全な理解を出発点として、実践を通じて徐々に深めていけばよいのです。
完璧を求めるあまり前に進めないよりも、不完全でも行動し続ける方が、結果的には早く成長できます。
私自身、エンジニアとして挫折した経験から学んだのは、「行動することで道は開ける」という真理です。
悩み続けても解決しなかった問題が、一歩踏み出してみることで思いがけない形で解消されることは少なくありません。
プログラミング学習も同じです。
思考だけで完結させようとせず、実際にコードを書き、動かし、失敗し、修正する。
この繰り返しが、確実な成長につながるのです。
時に「プログラミングは若い人向き」という声も聞かれますが、これも単なる思い込みです。
私の講座には様々な年齢層の方が参加されますが、年齢によって学習の速度や質に決定的な差があるとは感じません。
むしろ、人生経験豊かな方が概念の本質を捉えるのが早いケースも多々あります。
大切なのは、年齢ではなく、好奇心と学ぶ意欲なのです。
プログラミングの世界は日々進化しています。
新しい言語、フレームワーク、ツールが次々と登場し、追いつくのが大変と感じることもあるでしょう。
しかし、基本的な概念やアプローチは驚くほど普遍的です。
一つの言語や技術を深く理解すれば、他の技術にも応用できる力が身につきます。
だからこそ、最初は「広く浅く」よりも「狭く深く」学ぶことをお勧めしています。
最後に強調したいのは、プログラミングは単なる技術ではなく、創造の手段だということです。
自分のアイデアを形にする、問題を解決する、便利なツールを作る、新しい表現方法を見つける…。
それらはすべて、プログラミングを通じて実現できることです。
技術的な側面だけに目を向けると難しく感じるかもしれませんが、「何を創りたいか」という視点を持つと、学ぶモチベーションも高まります。
プログラミングの学習には、確かに忍耐と継続が必要です。
しかし、それは決して特別な才能や素質が必要という意味ではありません。
誰にでも始められ、誰にでも成長できる分野です。
大切なのは、自分自身の思い込みや不安に縛られず、一歩を踏み出す勇気を持つこと。
その一歩が、新たな可能性の扉を開き、思いがけない成長につながるはずです。
私も17年間のエンジニア経験、挫折、そして講師という新たな道へと、常に一歩を踏み出すことで人生の道を切り開いてきました。
今では天職に出会い、文字通り「えびす顔」で毎日を過ごしています。
あなたもプログラミングの世界で、悩みすぎず、向き不向きを気にしすぎず、まずは小さな一歩を踏み出してみませんか。
きっと新しい発見と成長の機会が待っていることでしょう。